秘密主義な人とは仲良くなれない話

コミュニケーション体験談
コミュニケーション体験談

バーベキューなんて何年ぶりだろうか。久しぶり過ぎて覚えていない。昼前に友人に誘われて東京の郊外にきた。東京都武蔵野市にある小金井公園は東京ドーム17個分もある広大な公園だ。野球場やテニスコートなどの各種スポーツ施設の他にサイクリングコース、ドックランまである。公園の一角にバーベキュー場があり、天気の良い日はバーベキューを楽しむ人でいっぱいだ。今日も晴れていてバーベキュー日和。

友人は以前あるバーベキューサークルに参加したらしい。そのサークルは毎週のようにバーベキュー開催して楽しんでいる。今回も友人の紹介でそのサークルに初参加することになった。

友人の話では女性もたくさんいて楽しかったとのこと。期待に胸を膨らませてバーベキュー場に行くと、友人がサークルの主催者らしき男性に挨拶した。「初参加の人も毎回たくさんいるから楽しんで!」感じの良い主催者は言った。今回の参加者はおよそ25名ほど。ほとんどが男性だった(話が違う)。女性もいるにはいるが、男性の連ればかり。テンションが下がっている様子を友人が察したのか「今日は男性が多いみたいだね」独り言のように言った。せっかく誘ってもらったので友人に気を使わせてはいけない。今日は純粋にバーベキューを楽しもう。肉を食べられて酒が飲めればそれでよい!というモチベーションに切り替える。どんな状況でも楽しもうとする性格は私の唯一の武器だ(このように生んでくれた親に感謝)。

ここでふと思い出した。バーベキューで昼間に酒を飲みすぎるとバーベキューの帰り道あたりから頭が痛くなることを。バーベキューが久しぶり過ぎて忘れていた。前回も頭が痛くなって家で寝込んでしまったんだった。危ない、思い出してよかった。持っている缶ビールを飲むペースを抑える。男性ばかりのバーベキューで頭が痛くなるだなんて悲しい。せめて体調良く楽しんで帰るのが目標だ。

肉とお酒をそれなりに楽しんで、宴もたけなわ。焼きそばや甘いものが振舞われ始めた頃、一人の女性がバーベキュー場に現れた。サークルに参加したことがあるらしく、参加者みんなと気さくに話している。明るい彼女は今日見た中で一番のタイプだ。俄然テンションがあがってきた。彼女はバーベキューに誘ってくれた友人とも顔見知りらしく親しげに話している(チャーンス!)。さりげなく会話している2人に近づいて機会を伺う。そしたら友人が彼女に私を紹介してくれた(なんてデキる友人なんだ)。

いつのまにか持っているビールがなくなっているので、おかわり。彼女が来てから3本の缶ビールを立て続けに飲み干す。会話を楽しんでいたら、あっという間に終了の掛け声が主催者から発せられた。15時過ぎに解散。

女性の連絡先を聞こうとしたけれど、天性のシャイが発動して聞けなかった(こんなふうに生んだ親が恨めしい)。

結局、彼女の連絡先はゲットできずに帰宅。そして、頭痛に襲われた(やっぱり)。女性の出現に興奮して酒の量が増えたのが原因だ。連絡先もわからず、頭痛とは精神的にも身体的にもダメージを負うことになった。こういうときは横になるのが一番だ。しばらく寝よう。

仮眠をとったら落ち着いてきたけど、まだ少し頭がズキッとする。ふとスマホを見ると友人からメッセージが。「今日はありがとう。遅れてきた女性を覚えている?その子が広瀬さんの連絡先を知りたいというので教えてもいいですか?」

なんと!!「おっしゃ!奇跡が起きたー!」思わず叫んだので頭がガンガンして一人で悶絶する。楽しくなってきたぞ。二つ返事で「はい、大丈夫ですよー!」。歓喜を表す顔文字も入れようと思ったけれど、冷静を装ってビックリマークにとどめておいた。

しばらくして女性から連絡がきた「今日はお疲れ様でした。バーベキュー楽しめましたか?」女性の方から私に興味を持ってもらえるなんて年末ジャンボ宝くじがあたるくらいの確率だ。私の人生において記憶はない。それくらいレアなこと。このチャンスはきっちりと活かしていきたい。

「はい、バーベキューは楽しめました。でもバーベキューでお酒飲むと頭が痛くなってしまうんですよね(残念な顔文字)」

「あー、そういう人いますよね。私は肉が食べられなかった」と彼女。

「バーベキューの終盤に来ましたもんね、次回は始めから参加しないとですね」

「はい、またバーベキューしたいですね」

「ぜひまたバーベキューしましょう!」かなりいい感じだ。

「仕事は何しているんですか?」

「仕事は4つくらいやってます。広瀬さんは?」4つも!?

「WEB関係です、何系の仕事なんです?」

「会社経営してますよ」なんと女性社長!

でも、何の仕事なんだろう。「どんな仕事ですか?」再びチャレンジしてみた。

「色々です」はぐらかされてしまった。

言えない業種なのかな?まあ仕事内容は後々聞けばいいか。気を取り直して「休みの日は何されているんです?出かけたりします?」少しプライベートなことを聞いてみた。

「仕事でも遊びでも出かけてますね」

「買い物とかご飯食べたり?」粘ってみる。

「色々です」まただ。

この人は秘密主義者らしい。自分のことを明かさそうとしない。楽しい気持ちが冷め、彼女との間に急に壁が立ちはだかったような感覚。こういう返しをされるとコミュニケーションは盛り上がらないことがわかった。そのあとは「会社経営は大変ですよね」とか「景気に左右されますからね」など薄っぺらいやり取りに終始した。

自分の事を言わないと信頼されないというけれど、まさしくその通りだ。どんなに好意を持っていても冷めてしまう。

私は自分から、自分の思考や趣向を話すほうではないけれど、秘密主義では人と仲良くなれないことを肌で感じた。

彼女とはそれ以来連絡はとっていない。宝くじのようなチャンスだったのに。人生はやはり甘くない。

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