ネットを見ていたらおもしろいページを見つけました。
「笑いを生み出す文章の表現特性 ―すべらない話を資料として―」という大阪教育大学の教育学部小学校コースの奥田真心さんという人の卒業論文です。
「人志松本のすべらない話」で披露された40トークの内容を研究した論文なのですが、著者の奥田さんは「教師になれば教壇に立ち子どもたちの前で話をすることなど日常になってくる。『面白い話』ができることは日常生活をしていく上で有益であることは間違いない」と研究した目的を書いています(確かに)。
また「この語りのなかにどのような工夫やテクニック、人を引き付ける技術が含まれているのか、また、その技術はお笑いの場面だけでなく、教師として教壇に立ったとき、使えるものはないかと考え、この研究をするに至った」とのこと。
論文を読んでみると、トークもおもしろくするヒントが書いてありました。
とても参考になったので今回ご紹介します。
話題は「共感」されるものを
論文には、話がおもしろいかどうかは話題選びが大切で、話題選びでもっとも重要なことは「共感」を得ることだそう。
そしてネタ選びのコツは、たくさんの人が共通して経験し、共感できるネタをチョイスすること。
最も多くの人物から「共感」をえることができる話題として「家族」の話が挙げられる。生まれたとき誰もが持っている家族の話題は万人から「共感」を得ることの出来る話題である。次に学校(子ども・学生時代の思い出)、食・住(食べることなどの日常生活)、恋愛や仕事での話、最後に芸能(好きな有名人やアーティストの話)が「共感」されやすい話題とされている。
笑いを生み出す文章の表現特性 ―すべらない話を資料として―
確かに「家族」のことや「子どものとき」のことは多くの人が経験しているので共感されやすいんですね。
実際に『人志松本のすべらない話』でも「家族」を話題にした話が多く披露されているとのこと。
フリとオチについて
すべらない話には必ず「フリ」と「オチ」が存在しています。論文では以下のように説明しています。
フリ…聞き手に「この先、この話はこうなるんだろうな」という想定をさせる。
オチ…その想定を裏切るような意外な結末を用意する。
笑いを生み出す文章の表現特性 ―すべらない話を資料として―
またフリとオチとはどういうものかについて、とても腑に落ちた説明がありました。
打ち上げ花火は導火線に火を点けると、火が線を伝って火薬に引火し、ドーンと花火がうちあげられます。この(導火線)がフリ(火薬)がオチです。導火線(フリ)がしっかりしていれば、火が問題なく火薬(オチ)に引火し、花火(あなたの話)がドーンと打ち上げられ、花火を見ている人(聞き手)を魅了することができます。
笑いを生み出す文章の表現特性 ―すべらない話を資料として―
やっぱりフリをしっかり入れることがおもしろい話をするポイントなんですね。
笑いが起きるのは
笑いが起きるのは「笑いを起こす人物」と「笑いを起こす行動・状況」の2つの要因があるとき。
「笑いを起こす人物」も「笑いを起こす行動・状況」も5つに分類できるのだそう。
「笑いを起こす人物」
- 知能的な欠陥:子ども、愚か者、酔っ払いなど。酔っ払いは一時的な愚か者になってしまう。
- 性格的、道徳的欠陥:ケチ、欲張り、頑固者、あわてんぼう、卑怯など。丁寧すぎる、正直すぎるなど度を超えた場合も当てはまる
- 言動の過失:言い間違い、人違い、取り違え、放屁など自分の意志に反して過失を犯す人物。例えば、本人がいるとも知らずにうっかりその人の陰口を言ってしまう人など
- 職業・社会的地位の制約:教授、医師、先生、警察官、裁判官など。威厳をもって体面を取り繕う必要がある職業や社会的地位にある人は普通なら笑いにならないような行動でも笑いになりやすい
- 肉体的欠陥:肥満、ハゲ、ブサイクなど
「笑いを起こす行動・状況」
- 類似点の発見:もともと似ているはずのないものに思いがけず共通点を見つけたときに笑いが起こる。例えば、なぞかけやモノマネなど
- 思考や行動の突然の方向転換:予想が裏切られる、弱者に負ける強者、意外性など
- 思考や行動の不当な拡大:誇張された表現や動作
- 価値の下落:威厳を持った人がドジったり、外部には決して見せない本音が暴露されたりすること
- 歪曲された思考や行動:本末転倒、矛盾、詭弁、不可能、ナンセンスなど、バランスや常識を失った言動
わかりやすく書いたつもりなのですが文字にすると難しくなっちゃいますね。
要約すると「笑いを起こす人物」と「笑いを起こす行動・状況」の組み合わせで笑いが起きるということだそうです。
フリとオチ以外のトークテクニック
「フリオチ」以外にも話を面白くするテクニックがあり、すべらない話に出演しているお笑い芸人たちもそれぞれのテクニックを用いて話を構成しているとのこと。
こんなにテクニックがあったんですね、驚きです。
・アバン法…番組冒頭で見どころを伝える「アバンタイトル」にちなんだもの。「〇〇の話しなんですけど」など冒頭で聞き手の心をつかむテクニック。
・クエスチョン法…話題にするテーマについて、まず聞き手に直接問いかける形でスタートする。また、話の途中で質問を活用して話に起伏とリズムをつくり、聞き手の関心を途切れさせないようにするテクニック。
・シンクロ二シティ法…「偶然の一致」をおもしろいと思う人の心理を応用したもの。一致しないと思っていたものがたまたま一致したときに起こる笑い。
・ギャップ法…普段の姿とそうでないときの姿の違いに笑いが起こる。
・変則擬音語・擬態語…誰もが発想する一般的な擬音語・擬態語を使うのではなく、オリジナリティーのある変則的な音を使うことで話に個性をだす。
・毒舌法…他人に対し皮肉や辛らつな言葉をかけ、みんなの気持ちを代弁するもの。「共感」を得ることができる。
・一人芝居法…一人で声色を変えたり、身振り手ぶりで物まねをするこのように、何役も演じて話す。話に臨場感を与えたり、状況理解をしやすくする。
・適温下ネタ法…下品なことをあえて笑いのネタにすることで「緊張を緩和」したり「共感を生む」効果がある。
・繰り返し法…ある特定の言葉を意図的に繰り返すことで、話にリズムをつけることができる技法である。
笑いを生み出す文章の表現特性 ―すべらない話を資料として―
すべらない話の文字起こしをして解説もついていますので詳しくは「笑いを生み出す文章の表現特性 ―すべらない話を資料として―」をご覧ください。
まとめ
おもしろい話の参考になる卒業論文のページをご紹介しました。
ここまですべらない話を分析していると様々なテクニックや工夫があることがわかります。とても勉強になりますよね。
これらのテクニックや工夫を自分のトークにも取り入れて、周りの人たちを笑わせるすべらない話をしちゃいましょう。
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